東洋大学
理工学部 生体医工学科
バイオメディカル研究室
Biomedical Lab. Department of Biomedical Engineering,
Toyo University

アスリートの熱中症を予防するには?
熱ストレスを緩和する植物由来の機能性成分

東洋大学は、これまでさまざまなスポーツの分野で世界的に活躍するトップアスリートの養成をしてきました。その実績をふまえ、2017年、文部科学省が実施する「私立大学研究ブランディング事業」に採択され、①科学的根拠に基づいたアスリートサポート技術の多階層的研究、②暑熱ストレスの可視化研究と熱中症サポート法の開発、③高齢者ヘルスサポートシステムの開発の3点を目的に研究に取り組んできました。アスリートのサポートはトレーニングなどのフィジカル面だけでなく、栄養やメンタル、ストレス予防など多岐にわたります。同時に、複数の卒業生や在校生の活躍が期待される世界規模のスポーツ大会などに目を向けたときに、避けられない課題が熱中症の予防でした。理系科学者の立場から熱中症を検証し、抜本的に予防できる研究の取り組みをスタートさせました。得られた成果は、アスリートはもちろん、高齢者の健康サポートにつなげることが可能で、広く社会貢献に寄与できると考えています。

ハッサクとシークワーサーの外皮に機能性成分を発見

バイオメディカル研究室は、人々の健康・福祉・医療への貢献を目指して、医工学的手法を駆使したさまざまな研究を実施しています。特に「がんと免疫」をテーマに研究を進め、中でもストレスについて追求し、身体にかかるストレスを可視化するプロジェクトに取り組んできました。ストレスはメンタル、酸化、老化などさまざまありますが、その一つである熱ストレスに着目したことをきっかけに、熱中症予防の研究に着手しました。

始めに私たちは安全にかつ、すぐに実用化できるもの、日ごろから食べている野菜や果物に含まれる機能性成分の中に、熱ストレスを緩和する成分はないかを検証しました。世の中にはさまざまな化合物がありますが、刺激の強い化合物は副作用などのリスクが高いと考えるからです。結果として、柑橘由来の機能性成分「オーラプテン」と「タンゲレチン」が熱ストレスを緩和する効果があることを突き止めました。「オーラプテン」は、皮が厚い柑橘類、ハッサクのほかに文旦やグレープフルーツの外皮に、「タンゲレチン」はシークワーサーの外皮に多く含まれていることがわかっています。

本来、多くの柑橘類は太陽の光にさらされて育ちます。しかし、太陽の光の中には紫外線のような有害物質もあります。子孫を残す種や果肉を守るために、外皮には紫外線や害虫から守る成分が含まれていると考えられます。これは柑橘類に限ったことではなく、多くの果物や野菜の外皮には有用な栄養素が含まれているのです。薬学の観点で言えば、ミカンの外皮は陳皮と呼ばれる生薬でもあることはよく知られています。また、「タンゲレチン」を含んだシークワーサーは、日本では沖縄地方だけに自生する柑橘類です。「タンゲレチン」を知らなくても、昔からシークワーサーが沖縄の人々を熱ストレスから守ってきた果実であることも理解できます。

機能性食品の開発とハッサクプロジェクトが始動

現在、産学連携の取り組みとして、大手食品メーカーと一緒に、ハッサクやシークワーサーの外皮を使って、熱中症を防ぐ機能性をうたえる製品開発に取り組んでいます。すでに特許を取り、商品として世にでます。近い将来、熱中症予防対策の一つとしてメディアなどに取り上げられ、老若男女問わず夏場の健康サポートに貢献できることに期待しています。

一方で、和歌山県は全国の8割を占めるハッサクの生産地です。しかし、他の柑橘類に比べてひかえ目な存在のハッサクは、他の新しい柑橘系果物に押され気味という現状は否めません。このハッサクに熱ストレス緩和の付加価値を付けて、地域活性化に一役買おうと和歌山県紀の川市と東洋大学、そしてコーディネーター役の企業の産学官が連携して、ハッサクプロジェクトをスタートさせました。生産、加工、流通を含めた独自産業を展開し、ハッサクを熱ストレス緩和効果とともに、広く知っていただこうと考えています。地場産業の活性化と健康を大学の研究でブリッジしていくことで新たなる価値創造を目指していきたいですね。



高校生に向けてのメッセージ Message
生体医工学科は健康や医療分野に関わる先生方が、薬や機能性食品、身体にかかるストレスを可視化する研究、医療機器や介護関連機器の開発研究に取り組んでいます。医療分野で社会貢献を考えたとき、医学部だけがその領域ではありません。研究内容を十分に検討したうえで、進むべき道を見つけてください。
東洋大学 加藤 和則 教授
Profile
理工学部 生体医工学科
加藤 和則 教授
1985年に東北大学薬学部を卒業。同大学院の薬学研究科に進学し1991年薬学博士号を取得。2011年から現在に至るまで東洋大学理工学部教授を務める。日本白血病研究財団のウェラ賞を受賞の他様々な経歴あり。
1985年に東北大学薬学部を卒業。同大学院の薬学研究科に進学し1991年薬学博士号を取得。2011年から現在に至るまで東洋大学理工学部教授を務める。日本白血病研究財団のウェラ賞を受賞の他様々な経歴あり。

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