日本工業大学 学長成田 健一

1979年3月広島大学総合科学部卒業。
1986年6月同大学大学院工学研究科博士課程単位取得満期退学(環境工学専攻)。
同年7月広島大学工学部助手を務め、工学博士号を取得。
都市域の熱環境・風環境、建築環境工学を専門とする。
1997年4月日本工業大学工学部建築学科助教授。
2000年4月同学部学科教授。
2011年12月日本工業大学教務部長に就任。
2015年12月から現職。

現場に強いデータサイエンティスト育成
2022年4月、新学科を開設

数理的知識と先進分野を合わせて学ぶ

――日本工業大学は2018年に学部・学科を大幅に改組し、基幹工学部・先進工学部・建築学部の3学部6学科体制にしました。そして、来年4月に先進工学部に「データサイエンス学科」を新設するそうですね。

我が国がめざすべき未来社会の姿として、Society 5.0が提唱されています。これは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会です。そうした社会に求められるのは、IoTシステムを構築して全ての人とモノをつなげて新たな価値を創出する能力や、AIを活用したビッグデータ解析により、さまざまな社会的課題を解決できる能力です。そこで、そうした能力を持った技術者を育成するため、新学科を開設します。

――近年、データサイエンスは医療や教育などあらゆる分野で急速に注目されています。新学科の特徴を教えてください。

私はデータサイエンスには大きく分けて2つのステップがあると思っています。1つは、解決すべき課題を定義し、目的にあったデータを収集するまでのステップ、もう1つは、収集したビッグデータを分析して結論を導き出し、その効果を評価するまでのステップです。データサイエンスでは、数理統計やAIの知識に基づいたビッグデータ解析が、その中心的な技術として注目されがちです。しかし、データ分析の前段階として、実社会で解決すべき課題を見極め、データ収集のためのIoTシステムを設計・構築し、収集したデータを前処理するなど、効率的なデータ分析につなげるまでのステップが重要です。これがあって初めて現場の課題解決に結びつく「データサイエンス」という概念になるのではないでしょうか。

実社会のデータを集めるには、物理的メカニズムを理解して目的のデータを数値化するノウハウが必要です。センサーやマイコンに関する正確な専門知識を持ったうえで、課題解決に見合ったデータをデジタル化する技術、ネットワークを介して得られたデータを集約するIoTシステムを構築する技術、さまざまなデータ処理を実装できるプログラミング技術、これらがないと、モノづくりの現場で使える技術者にはなれません。

そこで、新しい学科では、高度なデータ分析を行うための統計やAIなどの数理的専門知識に加えて、IoTシステムやサービスの基盤となるプラットフォームを構築・活用するための実践的システム構築技術を合わせて学び、現場に強い技術者、データサイエンティストの育成をめざします。

日本のモノづくりの発展に貢献してきた本学としては、モノづくりの現場で生かせるデータサイエンスを学べるべきだと考えました。自ら身体を動かし、モノづくりの精神を鍛える「実工学」の伝統を持つ本学だからこそできる教育だと思っています。

――現在、モノづくりの現場で活躍している技術者の再教育にもなりそうです。

現場に送り出した卒業生の多くが学び直しの機会を欲しています。まずは、彼らにリカレント教育の場を提供し、その上で、中堅技術者の学び直しができる教育体制を整備していきたいと考えています。

日本工業大学 成田健一

データサイエンスを全学科でも学べるように…

――データサイエンスを全学の基盤教育としても位置づけるそうですね。

本学は創立時から工業高校の生徒を積極的に受け入れてきたため、現在も工業科出身者が3割程度を占めています。工業高校には情報系の学科はそれほど多くないので、多くは高校での学びに直結する機械工学科、電気電子通信工学科、建築学科への進学を希望しています。

しかし、これらの分野でも近年はデータサイエンスの知識の必要性が高まっています。そこで、全学部・学科の学生がデータサイエンス学科のコア科目を学べるように「学科横断データサイエンスプログラム」を導入することにしました。

――他にも、新しい取り組みやプログラムを考えられているとお聞きしました。

今や、工学系の学生といえども、社会の仕組みとルールの理解は必須です。そこで、来年度から「現代社会の基礎知識」という全学共通科目を新設する予定です。ここでは学生が課題解決型人材として活躍できる視野を獲得するため、現代の社会が抱えるさまざまな課題について包括的に理解していくことをめざしています。複雑な要因が絡み合っている現代社会の課題を俯瞰し、主体的に解決策を探っていく取り組みはSDGsにも通じるものだと思っています。

●本記事の内容は2021年取材当時のものです。

日本工業大学 学長 成田 健一

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