関東学院大学
理工学部 応用化学コース
友野研究室
Tomono Lab. Applied Chemistry Course,
Faculty of Science and Engineering, Kanto Gakuin University

機能性物質の組み合わせは無限大!
研究を通じて実社会で役立つスキルを養成

全ての電気製品に欠かせない部品に、電気エネルギーをためる「キャパシタ」というものがあります。キャパシタは別名「コンデンサ」とも呼ばれ、電池と似た機能があります。2つを比べると、電池は電気をたくさんためることができても、瞬間的に大きなエネルギーを放出するのが苦手です。反対にキャパシタは電気をあまりためることはできませんが、瞬間的エネルギーを多く放出することができます。そのため、キャパシタと電池のよいところを併せ持った次世代のキャパシタが求められています。

キャパシタの材料は層状になったマンガン酸化物です。関東学院大学理工学部の友野和哲准教授はマンガン酸化物の層の間に金属錯体を入れると電気をためる能力が向上することを7年前に世界で初めて発見しました。金属錯体は金属イオンと有機化合物からできていますが、どちらも変更が可能で、いわば「自由にデザインできる機能性物質」。さまざまな物質でできた金属錯体を試すことで、どのように性質が変わり、それによりキャパシタの性能がどう変わるのか、友野研究室では院生・学部生が一体となって研究を進めています。

さまざまな機能性物質を実験で試す面白さ

私はよく層状マンガン酸化物と金属錯体の関係を、ハンバーガーに例えて説明します。層状に積み重なったマンガン酸化物は、ハンバーガーのバンズに当たります。金属錯体はその間に挟む具材です。ハンバーガーを食べるとき、具材を肉にするのか野菜にするのかにより、味や摂取エネルギー量が変わります。マンガン酸化物と金属錯体の関係もそれと同じで、私の研究室でもいろいろな具材を試して、キャパシタの性能がどのように変わるのか、日々実験を繰り返しています。具材には何を使っても自由。それにより異なる結果が出て来ることが、この研究の面白いところです。

実はキャパシタが電気をためたり放出したりを繰り返すと、金属錯体が脱離してしまう現象が起きることがわかっています。いわばハンバーガーを食べるときに具材がはみ出てしまうようなもので、なんとかこれを防ぐことができないか研究を続けたところ、脂の性質を持つものを挿入すると金属錯体がはみ出さず、キャパシタの性能も上がることを突き止めました。この研究の中心となったのが大学院工学研究科物質生命科学専攻2年の板倉誠さんです。彼の発表は2020年10月の日本化学会主催「CSJ化学フェスタ2020」で優秀ポスター賞を受賞しました。

測定から解析までできる力、伝える力が身につく

他にも金属錯体の特徴を活かした研究を複数進めています。例えば、金属錯体は可視光線のエネルギーを吸収しやすいので、太陽光エネルギーを利用して電気を生み出せるのではないか。また、マンガン酸化物のような層状の化合物は物質を吸着する性質があるので、水溶液中の環境汚染物質を吸収したり、分解したりする能力があるかもしれません。こうした一連の実験を通じて、私の研究室では卒業までに「ひとりで測定から解析までできる」力を学生が身につけられるよう教育しています。本学では測定や解析のための装置も充実しています。X線光電子分光(XPS)という測定装置は大変高価なため、設置している大学はごく少数です。研究室にある卓上型の粉末X線回折(XRD)は分子の構造を調べられる装置ですが、学部生が自由に使用し、実践を通してスキルを身につけています。

さらに、どんなに素晴らしい研究成果であっても、相手に伝わらなければ意味がありません。そこで私の研究室では、プレゼンテーションの方法や発表資料の見やすさにも力を入れています。学生には学会で発表する機会を用意し、その際の話し方やパワーポイント資料の作り方も細かく指導します。学会で聴講されるのはその分野に詳しい方ばかりですから、発表する側も覚悟が必要です。学生時代にこの経験を積めることは非常に意味があり、卒業生から「見せることにこだわる理由が社会に出てわかった」という声をよく耳にします。本学の素晴らしい環境と実践的な学びで多様な力を身につけ、学生には社会で活躍できる人材になって欲しいと思います。

友野准教授と学会でポスター賞を受賞した板倉さん。

所属する学生が研究室に集まり、研究以外の会話もにぎやか。

友野准教授と学会でポスター賞を受賞した板倉さん。

所属する学生が研究室に集まり、研究以外の会話もにぎやか。

高校生に向けてのメッセージ Message
大学は自分が興味のある分野で、やりたいことを経験できる場所です。研究室で研究したテーマがそのまま就職先で活かせることはほとんどありませんが、研究を通じて身につけた心がまえやスキルは一生の財産になります。プライドを持って専門分野を研究する教員から、ぜひ多くのことを学んでください。
Profile
理工学部 応用化学コース
友野 和哲 准教授
2008年東京理科大学大学院理学研究科化学専攻、博士(理学)。東京理科大学理学部化学科助教、山口大学工学部応用化学科助教。宇部工業高等専門学校准教授を経て、2017年より関東学院大学理工学部理工学科応用化学コース専任講師。2019年4月より現職。
2008年東京理科大学大学院理学研究科化学専攻、博士(理学)。東京理科大学理学部化学科助教、山口大学工学部応用化学科助教。宇部工業高等専門学校准教授を経て、2017年より関東学院大学理工学部理工学科応用化学コース専任講師。2019年4月より現職。

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