管状炉で焼酎かすを賦活化し、仕上がりをチェックする田島教授。

福岡工業大学
工学部 電気工学科
田島研究室
Tashima Lab. Faculty of Engineering, Department of Electrical Engineering,
Fukuoka Institute of Technology

廃棄される「焼酎かす」を次代の資源に!
ゴミを活用し、日本のエネルギーを変える

九州人にはとくに馴染み深いお酒「焼酎」。実はこの焼酎、製造過程で焼酎かすが大量に発生し、多くの酒造メーカーがこの処理に苦慮しています。本格焼酎の生産量が全国一の鹿児島県では、発生する焼酎かすの量がなんと約35万4千トン(平成21年度)。昔は海洋投棄されていましたが、2007年に「改正海洋汚染防止法」が施行され、全面禁止となりました。陸上処理にかかる費用はというと、出荷量がそう多くない中小メーカーでも年間数千万円。自社でリサイクルプラント設備を導入している大手もありますが、すべての酒造が設備を導入するのはコストから見ても非現実的です。

そんな環境問題に一石を投じるのが、福岡工業大学工学部電気工学科の田島大輔教授。未利用資源である焼酎かすから、次世代の高性能電池を研究し、さまざまな地元企業と共同で焼酎かすを使った開発プロジェクトを発足しています。その実用性の高さと、環境貢献度の高さから、日本はもとより、海外からも注目を集めています。鹿児島県出身で自身も大の焼酎好きという田島教授。研究を語る姿からは、この研究の可能性、そして課題と真摯に向き合う情熱があふれていました。

焼酎かすでつくった活性炭が高機能の電池に変身!

エネルギーの地産地消。この可能性に望みを託し、焼酎かすの研究を始めたのが約10年前です。地域が抱える課題を解決しながら、地域にエネルギーを還元していきたい。その時は、研究者として自分の研究で世の中に貢献できること探っていた時期でした。そんな矢先、研究の追い風となったのが、私の研究に可能性を感じてくれた宮崎市にある酒造所との出会いです。この酒造所の全面協力を得て、焼酎かす由来の高性能電池の開発が加速していきました。

まず、電池をつくるには乾燥させた焼酎かすが必要となります。その焼酎かすを薬剤と混ぜ、管状炉で約600℃で燃焼し、炭化。さらに再び約1000℃で焼き固め、賦活化させます。それが活性炭であり、電池の原料となるのです。この焼酎かすからできた活性炭を電子顕微鏡で見てみると、活性炭の表面には目では見えない小さな穴(孔)が無数に存在し、1グラムあたりの表面積が平均800~2000平方メートルが一般的といわれている中、現在までの私たちの研究では最大2800平方メートルに達しました。この表面積が大きいほど、表面の穴にイオンが吸脱着する量が増えるため、より多くの電荷を貯めることができます。しかも、リチウム電池のように化学反応を伴わないため、数秒単位での急速な充放電が可能であり、理論的には電極が劣化しないためメンテナンスも必要ありません。

現在、活性炭の主な原料であるヤシ殻は、約8割がアジアからの輸入に頼っています。輸入費の高騰、さらには地域活性化の側面からも、この焼酎かす生まれの活性炭を用いるメリットは大きいはずです。

有機物であればどんなゴミもエネルギー資源に再生!

現在までに、この研究に興味を持ってくださった鹿児島県発のベンチャー企業・株式会社BlueForceと共同で、高性能電池「金属空気燃料電池」と「電気二重層キャパシタ(コンデンサ)」の研究、開発を行いました。この「金属空気燃料電池」は、薄型のシートタイプで水を数滴垂らし、空気と触れるだけで発電します。単三電池と同じくらいの電圧が出て、スマホであれば30%ほど充電が可能です。薄型で携帯も簡単な上に、水がないときは唾液でも発電可能なので、災害時などにも有用です。このように発電・蓄電ができ、持ち運びができることで、ゆくゆくは離島や海外などへ電気を運ぶことも可能に! しかも、送電線も不要のためコストも大幅に抑えられます。

現在は、焼酎かすを原料とした電池の開発も軌道に乗り始めたため、新たなエネルギー資源を探求しています。とくに今注目している海洋プラスチックは、環境問題の観点からもいち早くエネルギーの可能性を見出したい素材です。炭素を含む有機物であれば賦活化できるため、例えば企業が出す産業廃棄物、家庭から出る廃棄された食品なども、この技術で再生可能エネルギーになり得ます。私にとってゴミは宝です。企業や家庭から出るゴミを使い、地域の課題を解決することはもちろん、日本のエネルギー環境をも変えていきたいです。

焼酎かすでつくったパウダー状の活性炭。


「株式会社BlueForce」と開発した金属空気燃料電池と電気二重層キャパシタ。
焼酎かすでつくったパウダー状の活性炭。


「株式会社BlueForce」と開発した金属空気燃料電池と電気二重層キャパシタ。

高校生に向けてのメッセージ Message
地方にはその地域特有の文化や社会が存在しており、課題解決に頭を抱えているところがたくさんあります。私の研究も、故郷・九州の問題に私の研究が一役買えればという思いに端を発しました。自分が何のために勉強し、何のために働くのか。これを早い段階で考えておくと、将来の可能性が広がるはずです。
Profile
工学部 電気工学科
田島 大輔 教授
2005年宮崎大学大学院電気電子工学専攻修了。2008年同大学大学院物質エネルギー工学専攻修了後、同年に同大学農学部ポスドクに。2010年宮崎大学IR推進機構特任助教、2014年には研究員を務める。2015年福岡工業大学工学部電気工学科助教、2018年に准教授に就任。2021年より現職。
2005年宮崎大学大学院電気電子工学専攻修了。2008年同大学大学院物質エネルギー工学専攻修了後、同年に同大学農学部ポスドクに。2010年宮崎大学IR推進機構特任助教、2014年には研究員を務める。2015年福岡工業大学工学部電気工学科助教、2018年に准教授に就任。2021年より現職。

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