福岡工業大学
工学部 電気工学科
北川研究室
Kitagawa Lab. Faculty of Engineering, Department of Electrical Engineering,
Fukuoka Institute of Technology

電気抵抗がゼロになる「超伝導」材料
元素の無限の組合せで可能性も無限に!

みなさんは超伝導という現象をご存知でしょうか。実はその現象、医療機器のMRI(磁気共鳴画像診断装置)や、2027年開業予定のリニア中央新幹線などに応用されるなど、意外にも私たちの生活の身近なところに存在しています。そもそも超伝導とは、1911年に発見された、水銀の電気抵抗が4.2ケルビン(=マイナス268.8℃)以下で消失するという現象。本来、電気を銅線などに流すと電気抵抗によって電流の流れが妨げられ、電気の一部が熱に変わり、エネルギーが損失してしまいます。しかし、この超伝導現象を用いることで、熱が発生することなく、エネルギーも損失しないというメリットがあるのです。これは超伝導体にしかない特徴といえます。

北川研究室では、こうした超伝導現象を起こす新たな物質を、独自の設計により開発を進めています。2019年からは、スイスのチューリッヒ大学とスイス連邦工科大学と共同研究を実施。北川教授が試料の製作を担当し、スイスの研究グループが物性測定を担当しました。「世界中で自分だけが知っている発見ができることが研究の醍醐味」と語る北川教授に、超伝導体の可能性、共同研究を行う新物質、そして研究の魅力について伺いました。

超伝導になる温度をいかに上げるかが最大の使命

超伝導の現象をつくり出す材料を超伝導体といいます。電気を通しやすい物質が超伝導になりやすいといわれており、水銀やニオブといった複数の元素からなる金属間化合物が超伝導体によく用いられています。私たちはその中でもNb5Ir3O(ニオブ5イリジウム3酸素)という既存の超伝導体をもとに、イリジウムの一部をプラチナに置き換えた新物質をスイスの研究チームと開発中です。この物質の特徴は、一部を置換することで多バンド超伝導体が、1バンド超伝導体に移り変わること。そもそも原子の中心には原子核というものがあり、その周りには電子が回っています。それが結晶のように並ぶと電子同士がつながり、結晶中を自由に動き回るのです。この状態を“バンド”と呼び、その状態が複数ある超伝導体を多バンド超伝導体といいます。

多バンド超伝導体は、比較的高い温度で超伝導状態になること、さらに、外部からの影響を受けにくく、電流を安定して流せる超伝導体になることがわかっており、世界的にも開発研究が盛んに行われている領域です。ただ、温度が比較的に高いといっても、実用化されている超伝導体はマイナス260℃という超低温。超伝導体を冷却するために、液体窒素や液体ヘリウムが使われていますが、電流を流しながら冷却し続ける必要があるため莫大なコストがかかってしまうのが現実。そのため、もっと高温で超伝導になる物質の開発が求められています。

元素の組み合わせは無限=超伝導体の可能性も無限

現在は、Nb5Ir3Oの元素を少しずつ置き換え、新たな可能性を探っている段階です。実用化までの道のりは長いかもしれませんが、そこで得られた知識を実用化しやすい超伝導体に応用していくことで、違う角度から超伝導の可能性にアプローチできるはずです。もし、超伝導体になる温度が少しずつでも高くなれば、例えば送電線の場合、冷却機能が不要になるため仕組みが簡素化し、無駄なく電気を送ることができるようになる。さらに、冷やすために使う電力が抑えられることで、二酸化炭素の排出量も減り、環境への負荷も軽減される、といったたくさんのメリットが考えられます。

実は最近、常温で超伝導状態になる物質が開発されたとニュースになりました。しかし、地球深部ほどの非常に高い圧力がかけられた環境でないと超伝導が発現しないなど、まだまだ条件が現実的ではありません。しかし、元素は限られた数しかありませんが、その組み合わせは無限にあります。だからこそ、私たちがまだ出会っていない物質もたくさんありますし、日々私はそこに無限の可能性を感じています。これから先もアッと驚くような、すごいことが起きるでしょう。人間が未知なる可能性を求めて研究の手を止めないこと。失敗しても、そこから学び、次に生かそうと努力すること。こういった未来へ注がれるエネルギーは、研究者が常に持っていなければならないと思います。

超伝導体のもととなる試料の合成をアーク溶解炉で行っている様子。

超伝導体の候補物質を探すために、膨大な数の試料を合成。

超伝導体のもととなる試料の合成をアーク溶解炉で行っている様子。

超伝導体の候補物質を探すために、膨大な数の試料を合成。

高校生に向けてのメッセージ Message
私の研究室では、超伝導体の新たな物質の開発に取り組んでいます。研究中、何か新たな発見をしたとき、それを知っているのは世界中で自分一人だけ。その体験に、きっとこれまでの人生で経験したことがないほど興奮するでしょう。みなさんにも、このような気分の高まりをぜひ一度体験してもらいたいと思います。
Profile
工学部 電気工学科
北川 二郎 教授
1993年京都大学理学部卒業。1995年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、1998年同専攻博士課程修了。1998年~2001年日本学術振興会特別研究員を経て、2001年~2012年広島大学大学院先端物質科学研究科に所属。2012年より福岡工業大学工学部電気工学科准教授、2015年より現職。
1993年京都大学理学部卒業。1995年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、1998年同専攻博士課程修了。1998年~2001年日本学術振興会特別研究員を経て、2001年~2012年広島大学大学院先端物質科学研究科に所属。2012年より福岡工業大学工学部電気工学科准教授、2015年より現職。

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